バッテリーのQ&A
私がバッテリーに関して疑問に思っていたことをいくつか調べました。それをQ&A形式で書きます。
◆ どうしてバッテリーに電気が蓄えられるの?バッテリーは蓄電池というくらいだから、電気を蓄えているわけですが、電気の形で蓄えているのではありません。 バッテリーから電気を取り出しているとき、バッテリーの中では化学変化が起きています。この化学変化が続くかぎり電気を取り出すことができます。 これは、塩酸の中に大理石を入れると二酸化炭素が発生するのと同じことです。大理石がなくなるか、塩酸が塩化カルシウムと水に変化しきったら、二酸化炭素は発生しなくなります。同様に、バッテリーの中の化学変化が終了したら電気は取り出せなくなります。 電気を取り出せなくなるまで放電させることを過放電といいます。過放電をすると極板が変質して、充電しても元の状態に戻り難くなるので、過放電には注意しましょう。 蓄電池に電気を加えてやると放電と逆の化学変化が起きます。つまり、充電は放電の逆の化学変化をバッテリーの中に起こさせて、化学的に再び電気を取り出せるような状態にすることなのです。 この充電と放電を繰り返すことができるのが、クルマやフネに積んでいるバッテリーです。
◆ 過放電って何?過放電とはバッテリーの電圧が10.5Vまで放電した状態です。過放電させてもすぐに充電すればいいのですが、時間がたつと内部の化学物質が結晶化して充電を妨げてしまいます。これがバッテリーの劣化です。こうなると、例えば、80Ahのバッテリーが50Ah位の能力になってしまいます。 ちなみに、日本電池製のSEBシリーズの資料によれば、100%放電状態で11.5Vとなっています。SCHEIBER社製のローボルテージセキュリティーは、バッテリー電圧が11Vになると、負荷との接続を切ります。
◆ サルフェーションって何?サルフェーションを日本語で言うと「白色硫酸鉛化」といいます。これは、最も注意が必要な、バッテリーの劣化現象です。 過放電や高温長期間放置後,電極面上に白い硫酸鉛(PbSO4)が析出する現象で、電極は導電性の悪い膜で覆われ、充放電反応が阻害されます。その結果、バッテリーの容量が少なくなります。軽度のものは電解液比重を1.10より低くして30〜40℃に保ち、20時間率で長時間充電することで回復することがあります。それでも回復しなければバッテリーの寿命です。
◆ どうしてバッテリーには寿命があるの?バッテリーは、硫酸が鉛と反応して放電し、充電で鉛と硫酸に戻します。これを繰り返していると、放電時に硫酸と反応して作られた硫酸鉛が結晶化して元に戻りにくくなります。元に戻りにくくなるということは、当初ほど電気を蓄えられない、ということです。結晶化が進むとますます電気を蓄えることができなくなります。このようにしてバッテリーは寿命に近づいていきます。 過放電によっても、硫酸鉛が結晶化してしまいますので、過放電によっても寿命が来ます。バッテリーはいつも充電状態にしておいたほうがいい、というのは硫酸鉛を結晶化させないためなのです。使用後はできるだけ速やかに充電をしましよう。過放電状態になる前に外部と遮断、放電を防ぐ保護装置を付けるのも効果的です。 充電不足の状態が続くと、硫酸鉛がだんだん結晶化(サルフェーション)し、充電しても元の鉛に戻りにくくなってしまいます。
◆ 短時間でたくさん使うと容量が小さくなるのはなぜ?放電電流が大きい、つまり短時間で大容量を消費する、ということは、バッテリーの中で起きている化学変化が、急速に進むということです。この場合、取り出せる容量が少なくなります。 バッテリーから電気を取り出すと、極版表面の活物質と極版表面付近の電解液(硫酸)が反応し、活物質は硫酸鉛に変化し、電解液の比重が低下し、放電電圧が下がります。放電電流が大きいときは、極版の深部に反応が進まず、イオンの移動も追いつかないために電圧が急激に低下し、早く放電終止電圧に達します。つまり、放電電流が大きいときは、バッテリーの持っている活物質や電解液を有効に使っていないといえます。 例えば、日本電池製のSEB100は5時間率で100Ahですが、1時間率だと65Ahになってしまいます。
◆ バッテリーと温度の関係は?低温だと取り出せる容量が少なくなります。例えば、20℃で50Ahの容量のバッテリーも0℃では2割減の40Ahぐらいの容量になってしまいます。逆に50℃では1割り増しの55Ahぐらいの容量になります。 では高温のほうがいいかというと、そうでもありません。温度が高いと自己放電率が上がります。例えば、20℃で一日に0.3%の自己放電するバッテリーは、40℃だと一日に1.2%くらい自己放電します。50℃なら3%ぐらい自己放電してしまいます。 この値はバッテリーの種類によって違います。どのくらい違うかというと、容量の50%を自己放電するのに、普通のバッテリーは2ヶ月かかりませんが、自己放電しにくいバッテリー(極版に鉛とカルシウム合金を使ったようなもの)は5ヶ月くらいもちます。
◆ 自己放電って?バッテリーは使わなくても一日に容量の0.5〜1.0%が放電されます。これを自己放電といいます。温度が高い程、また電解液の比重が高いほど多くなります。また、バッテリーの種類によっても違います。日本電池株式会社のEBシリーズは一日あたりの自己放電率は約0.1%(20℃)で、普通の鉛電池の1/3から1/4です。自己放電の原因は
◆ バッテリー残量を知るにはどうすればいい?放電したバッテリーを充電すると、放電と逆の化学変化を起こし、バッテリーが元の状態に戻ります。こととき、硫酸が極板から離れて電解液に戻り、電解液の比重が上がるので、電解液の比重を計ることで充電の状態を知ることができます。 この電解液の化学反を測定することによって、充電/放電の量を知ることができます。具体的には、電解液の硫酸の濃度を測定します。 放電が進むと電圧が下がるので、電圧を調べることによっても、バッテリーの残量を知ることができます。
◆ 比重の測定はどうすればいい?バッテリーの充電状態を知るためには、電解液の比重を測定します。 電解液の比重はスポイト式の吸込式比重計を使用して測定できます。ホームセンターで500円から千円程度で売っています。 バッテリー上部の液口栓を外し、スポイトで電解液を吸入します。するとスポイトの中のガラスの筒の中に浮子式の比重計計があって、電解液の比重を示します。 時々比重を測定し、比重が1.220(20℃)以下の時は完全充電したほうがいいです。1.280なら満充電と思っていいと思います。 電解液の比重は20℃を標準としていますが、温度が高いと体積が膨張して比重が低く、温度が低いと体積が収縮して比重が高く表れます。 比重の変化の割合は、1℃で0.0007ですから、正確な比重を知るためには、計算する必要があります。計算が面倒な方のために、表を作りました。 20℃で比重が1.280のときの各温度での比重
20℃で比重が1.220のときの各温度での比重
◆ バッテリーの管理はどうすればいい?メンテナンスフリーの密閉型のバッテリーならば、なにもしなくていいです。普通のバッテリーは、充電状態のチェックと電解液の量をチェックしましょう。
◆ カルシウムバッテリーって何?極版に鉛とカルシウム合金を使ったバッテリーです。自己放電が小さく、長時間放置したり、間欠的に使用される場合に、サルフェーションが生じにくく、耐食性にすぐれています。また、高温下でも放電特性が安定すると言われています。カルシウムバッテリーと表記がなくても、極版にカルシウム合金を使ったものもあります。
◆ ディープサイクルバッテリーって何?ディープサイクルバッテリーは、頻繁な充放電に耐えることができるバッテリーです。電動自動車のように、充電と放電のサイクルがはっきりしているものや、昼間太陽電池で充電して、夜にその電気を使うようなケースに向いています。
参考資料: 日本電池株式会社 技術資料 マイティシールドEB 密閉型鉛蓄電池:(Valve-Regurated形鉛蓄電池)
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