921124

金曜日は Wang と山手線ツアーをした。

山手線ツアーとは、山手線内の適当な駅におりてその町を探険するというものである。

どこかに旅行したとき、夕方ホテルに着いて荷物を置いて、 どっか呑みにでもいくかという感じで町に繰り出す。 知らない町をうろうろして適当な呑み屋で呑む。

そういう旅行感覚/旅人感覚/余所者感覚を山手線内で楽しむのが山手線ツアーである。 「しまむら」を発見したのも山手線ツアーだ。

今回の目的地は五反田である。五反田駅のホームで待ち合わせた。 Wangが遅れてきた。遅れてきたことを怒りながら改札を出る。 右の出口に出ようか左の出口から出ようか。 なんとなく右のほうに行ってしまう。駅の階段を降りて歩きだす。 駅から中途半端に近いところに屋台のおでん屋があった。とりあえずおでん屋で かるく腹ごしらえをしつつ今夜の作戦をたてようということにした。

屋台のノレンをくぐり、すみっこの方に腰掛ける。 ビールとおでんのタネを適当に注文した。 ビールの入ったコップをかるく持ち上げ「じゃ、まぁそいうことでお疲れ」と いうような最初の一杯を呑む前の儀式と呪文を唱えてからググッと呑む。 ここまではいつもと同じだ。

相手にビールを注ぐときに、最近発見された呪文「どう最近?」を唱えつつ注ぐ という儀式も紹介した。

ひといきついて屋台の中を観察した。対面の左端にカップルひと組。 その右隣にサラリーマンの年齢が顔に刻み込まれた中年男の2人連れ。 こっち側の右端がオヤジ2人連れ。その左隣に若い女。その隣が俺、Wangである。

なんだ? 俺の隣の若い女は。オヤジの連れか? それともこんな屋台に一人で呑みに来 てるのか? Wangと話をしつつも問題の女を観察してしまう。

観察の結果、オヤジ達の会話に全然混ざってないので オヤジ達の連れではない、と結論した。

この女、ひとりで屋台に呑みに来てる。 こういうとき、そういうヒトを無視するのはよくない。 屋台は見知らぬもの同士が声掛け合って他愛のない会話を楽しむところなのである。 屋台の伝統的なルールに則って俺は声をかけた。徐々に彼女を我々の会話に巻き込む。 いわゆるナンパ状態である。

屋台では軽い腹ごしらえのつもりだったので、これから本格的に探険しなければ ならない。我々は旅行者なので地元の女性(屋台の女)に案内をお願いした。

地元の女性の紹介で日本酒を飲ませるバーへ行った。店内はコンクリート打ちっぱな し。高い椅子と木目のはっきりしたテーブルとカウンタ。椅子とテーブルの脚は黒くて 細いパイプ。足をのせておくバーはクローム。インテリアに頭をあまり使っていな いカフェバータイプ(懐)である。店員は作務衣を着ていた。沢野ひとしによれば作務衣を 着ている人間を信用してはいけないんだそうだ。 日本酒のメニューは三春駒とくらぶるべくもない。おざなりのメニューである。 店の描写はどうでもいい。関心は地元の女性である。

彼女を地元の女性だと思っていたのだが、会社が目黒で家が都営浅草線沿線の千葉の ほうの人だった。今夜は呑みたくなったので乗り換えの五反田駅で降りたんだそうだ。

彼女はドイツに本社がある外資系の会社の部長秘書であることがわかった。

呑んでるうちに段々盛り上がってきた。そのうち例によって合コンしようということ になった。合コンネタでさらに盛り上がる。 石井さんはどうもWangのほうを気にいったみたいなんで、合コンの段取りはWang にお願いすることした。

後半の話は端折ってしまった。


【目次】