27-AUG-1993
すきやきの作り方は、鍋に牛脂を塗ってから肉を焼き、野菜を入れ、割り下を入れる。最もポピュラーな方法である。 すきやきの肉は焼く。しかも肉内部の旨みをおもんぱかって表面を焦がすくらいに焼く。 なるほど理にかなっている。しかし、追加の肉はどうなる。鍋はもう割り下で満たされていて肉を焼くことなどできない。鍋をコンロから下ろして、直火で肉を焼くか? 誰もそんなことはしない。追加の肉はなし崩し的になんのポリシーもなく鍋に投入される。 最初の肉を焼く時に、“これはすき焼きなんだかんな。すき煮じゃないんだかんな。肉は焼かなきゃな”とか、“肉汁の旨みを肉の中にとじ込めるためには肉の表面をかるく焦がすくらい焼かないと”とか言っていた人までも、追加の肉はただなにもせずに鍋に入れていく。 最初の肉を過大に依怙贔屓しすぎなのではないか。 私はかねがね疑問であった。 先日私は浅草のすき焼き屋「ちんや」の作法を見て、積年の疑問が氷解した。 牛脂をひいいた後、ネギを鍋に敷くように入れ、その上に肉をのせるのである。そのあと割り下を注ぐ。肉を入れる前に焼き豆腐やしらたきなどを入れてもよい。ポイントはネギの上に肉を置く、である。 なるほど合理的である。しかし、 すき焼きはうちで食うに限る 1,000円/100gの肉を4人で600g。それにネギとシラタキと焼き豆腐で一人だいたい2,000円ですむ。1,000円/100gの肉はさすがにうまい。 |