1989.12 さて、以前に栄養ドリンクのことをどっかに書いたが、最近では僕も飲んでるのである。 薬屋に行き、どれにしようかと物色する。そのときの思考がおもしろい。
栄養ドリンクはあまり安いのだと効かなそうだし、といってこんなものに大金を使うのはばかばかしい、というジレンマを抱えるのである。
「ふ〜ん、これが噂のリゲインか、でも俺あのコマーシャル嫌いだな、でも一回飲んでみっか、あと他にはどんなのがあんのかな、なになに、マムシなんとか、ほ〜、こりゃ効きそうだな、栄養ドリンク評論家である鴻上尚史はまむしなんとかを勧めていたけど、なんか昔の連れ込み宿の冷蔵庫って感じだな、こんなの会社の冷蔵庫に入れてたら絶対なんか言われるなきっと、このマムシなんとかシリーズははやめよう、こっちのユンケルはいくらだ、そうかそうか、ちょっと高いけど効きそうだな、もっと安いのはないのかな、リポビタンとか、アリナミンとか、そういうメジャーなのはないのかな、おっ、あったあった、ふーん、こういう値段なのか、ちょっと安いな、効かなそうだな、こういう栄養ドリンクってTVCMのイメージって大事だな、全然知らなかったら、“ユンケル黄帝液”なんてちょっと胡散くさくて誰も買わねぇだろうな、だいたい飲み物に“液”なんて名前、普通の感覚じゃ付けねぇぞ、まぁそんなことはどうでもいいから何を買うか早いとこきめなきゃな、この店の栄養ドリンク最多価格帯は300円から600円か、みんなはこんなもんに600円も出してんのかよ、もったいねぇな、まごまごしてると昼メシ一回ぶんの値段だぞ、吉野屋だったら、牛丼におしんことたまごと味噌汁がつけられるぞ、ちょとアシが出るけど、吉野屋で600円も使ったらお大尽だもんな、といってもパチンコ屋だったら600円なんてあっという間に使っちゃうけどな、ん〜む、この600円を昼メシとみるか、パチンコと見るかで感覚がだいぶ違うぞこりゃ、ちょと本気で考えてみっかな、う〜ん‥‥……、 おっとぉ、ホントに本気で考えるところだった、こんなもの買うのに本気出してどうする気だったんだ俺は、それにしてもパチンコと見るんだったら600円でも安いな、こういうのを買い馴れてるヤツってのはいったいどういう金銭感覚してんだろ、ま、俺はとりあえず今日が初めての購入だからご祝儀という意味も含めて300円から600円までひとつずつ買うとすっか」 というわけで、5種類くらいの栄養ドリンクを買ったのだった。 名前を出せばたいていの人が知っている方なのだが、彼女は毎回迷わず1,200円のユンケルを購入するという剛の者らしい。 |