15-JUL-1994
種の絶滅に関する本をよく読んでいる。最近ちょっと絶滅というのが気になっている。 種はいずれ絶滅する。人間がいなくてもいろんな種が絶滅してきた。 数億年(?)という長い間にわたって繁栄していた三葉虫が 固体数の急激な減少から絶滅までの時間は100万年程度の短い間だったと言われているし。他にも多くの種が現われては消えていったことは周知のことだ。
空を覆い、太陽を隠して、何時間も回りを薄暗くするほど大量のヨコウバトの渡りを 見れば、その種が絶滅するなんて誰も思わなかったに違いない。 アメリカ合衆国人はそのリョコウバトを取って取って取りまくった。肉の味が人間の好みに合ったというのもリョコウバトにとっての不幸だった。 北米大陸に生息していた何百億羽というリョコウバトが絶滅するまでの時間は約100年だった。あっと言う間だ。 種は発生して繁栄して絶滅する。 絶滅が始まると繁殖力が弱まる。雌が一度に出産する固体の数が減る。 例えばリョコウバトは1組のつがいから1度に1個の卵しか生まない。 リョコウバトには既に大量殺戮を補う繁殖力はなかったのだ。 あまりに大量に存在していたので、 固体数を爆発させないための進化だったのかもしれない。 また、絶滅のサイクルに入った種は繁栄していたころより体が大きくなる。 リョコウバトはちょっとしたニワトリくらいの大きさがある。 ちなみにドードー鳥というと七面鳥程度の大きさを想像するが、 その倍の大きさはあったらしい。 人間も体が大きくなってきているし、繁殖力も弱まっている。 発生してから絶滅まで記録的なスピードで進んでいるのかもしれない。
北米大陸のいたるところにいたアメリカバイソンも殺されまくった。 現代の動物愛護団体から見ればキチガイみたいなバッファロー・ビルが英雄だった。 なぜアメリカバイソンが殺されまくったかというと、 インディアン達がアメリカバイソンに依存した生活をしているから、 アメリカバイソンを皆殺しにすればインデァンが困窮するだろうという 白人の理屈だった。 しかし、アメリカバイソンの絶滅寸前に白人達はやっと気がついた。 そしてアメリカバイソンは助かった。
身長約4。5メートルの陸生のオオナマケモノ(メガテリウム(SP?))は 古代の人間と共に生存していたと推測できる証拠はあるが、今はいない。 この最大のナマケモノは前肢が長く後肢が短い。 前肢を地面につけて歩いているときの高さは約2メートルだった。 顔は今のナマケモノのように平面的な顔で、前肢の爪はまるで鎌のような大きさだっ たと言われている。想像するとすごく楽しい。 人間が関わる絶滅の歴史は、人間の歴史でもある。その歴史に登場する人物たちの 生き方が、種の絶滅にどのように絡んでいるのか、という人間の話でもある。 時代的に科学的な無知、というのも大きな要素だが、 我々だって後世から見ればじゅうぶん科学的無知なんだろうと思う。 今読んでいる本は 有名なドードー鳥の話と絶滅への歴史、とかキリスト教と博物学との葛藤等とても 興味深い。
ところで、私の友人の一人は、我々とは違った種だ。 亜種なのか、我々が進化した形なのかは 詳細に調べないとわからないが、特徴としては「親知らずが無い」ということだ。 これは新しい種として同定できる特徴である。 この新しい種の配偶者もまた新しい種だそうだ。ひらたく言うと 友人のヨメにも親知らずがない。 自然界で突然変異した個体どうしの交配が起こることは非常にまれである。 確率的に困難である。突然変異した個体は、既存の個体(マジョリティ)の海に沈んでしまう。しかし、ここで親知らずを持たない個体どうしが交配可能になったということは 親知らずを持たない個体が自然界ですでにある程度の発生率を得ているという証拠だ。 これはもう突然変異というより新しい種と呼んでもさしつかえないと思う。 我々は進化の現場に立ち会っているのだ。 |