910722

相棒の村上さんはナニかと忙しく練習になかなかこれないので,
佐々木紀子女史 (紀子はキコと読む) と練習パートナーを組むことにした.

彼女は製薬会社の営業ウーマンである. 
そのことと関係あるかどうかはしらないが, なによりガッツ(*1)のあるヤツである.

(*1) ガッツとはまた懐かしい単語である.

彼女とウチの最寄りの相鉄線星川駅で待ち合わせて,
それから俺のポンコツファミリアでクラブまで行く予定である.

彼女がなぜ我々(*2)の艇 Tasar に乗りたいかというと,
Tasar のレースで上位入賞し, 写真入りで雑誌に出たいんだそうだ.
純粋な動機である. 山際淳司の"スローカーブをもう1球" のなかの短編
のような話ではないか.
よっしゃ. いっしょにがんばろうではないか. そしてチャンピオンになろう.
女性セイラーはマスコミでは優遇される. 多少レース結果が悪くても
写真入りの可能性はある.

(*2) 艇は村上さんと共同で所有しているである.

さてその佐々木女史, ガッツがあるのはいいんだが大酒呑みでもある.
土曜日はそのガッツを酒飲みに使ってしまったらしく, 完璧な二日酔いで
登場した. さいさきのよい初日といわねばなるまい.

クラブについたら, 金田湾一帯が霧にかすんでいた.
霧が出ていて風があるわけがない. しばらく風待ちである.
風待ちの旨佐々木女史に告げると, 彼女は我々が部室と呼んでいる部屋に行き
寝てしまった. なるほど、二日酔いには有効な療法である.

クラブのメンバも手持ち無沙汰にヨットの置き場をウロウロしている.
こんなときは, 誰が言い出すともなく BBQ である.
BBQ となればナンパである. 早くも置き場から目をつけている2人組がいるという
話である. 俺ともう一人は海岸に降りていってその2人組をナンパしてきた. 
置き場まで釣り上げればあとは弱肉強食である.
俺は今回は釣り上げるだけにした. なんとなれば,
こないだ似たような手で知り合った女が今日クラブに
遊びに来るのである. 木曜日に電話があったのだった.

BBQ 始めてしばらくしたら風が吹いてきた.シーブリーズである.
風待ちしていた一団は一斉に浜から出艇した.

BBQ を始めるころに SET (スーパー エキセントリック シアター) の
小倉久寛(綴?) が久しぶりにクラブに来た. 美人連れであった.
彼が女連れできたのは俺の知る限り初めてである.

「あ, どうも」とか「こんにちは」とか適当に挨拶しつつ自分の艇の艤装を始めた.
美人は BBQ 要員となった.
この美人. どういう美人かというとモデルタイプである.
モデルというのは写真で見るとグーなのだが, 
生で見ると顔の道具だてと造作がちょっと違う. 
これは YBP (YOKOHAMA Business Park) で時々やっている雑誌の撮影を
観察していて思ったことでもある.

風が吹いてきたとはいえ吹き始めるのが遅かった.
佐々木女史はこの日の夕方に用事を入れていて, クラブを 15:00 には出たい
ということだった.
艤装/解装/練習海面までの往復等を考えると Tasar に乗ってもあまり
練習時間がとれない.

しかたなく俺はシングルハンドの艇に乗った. シングルハンドのほうが
艤装/解装に時間がかからない.
浜はそれほど吹いていなかったが, 沖はそこそこ吹いていた.
ときどきフルハイクしても艇のヒールが殺せないくらいだった.

佐々木女史もどっからか話をつけてきてシングルハンドに乗って出艇してきた.

風が吹いてきても BBQ 組は落ち着いて BBQ である.

【目次】