21-JUN-1993
鳥羽カップマッチレース関東予選の結果は、 ポート側(1号艇)8勝でスタボー側(2号艇)0勝だった。 1号艇は8戦全勝だ。 我々は負けた。負けた側の典型的な言い訳は「フネが悪かった:-)」である。 スキッパーズミーティングが8時からにもかかわらず、 小川さん、馬岡さん、永松は午前7時前に木更津マリーナの駐車場に到着。 他のチームは誰も来ていない。 到着時間競争でわれわれのチーム「エディ」はまず1勝だ。 さい先のいい出だしだ。 マリーナに上架してある我々のレース艇を見に行く。 1号艇は新しく、2号艇は古いように見える。気のせいかもしれないが気になる。 セールは新品を提供してくれるのだろうか。これでセールまで違ったら 艇速に差が出るぞ。どの程度の艇速差があるかわからないけど。 今回のレースはコースが短いので艇速よりもハンドリング勝負になるだろう。 とはいえ1号艇が当たることを祈る。 8時ちょうどにスキッパーズミーティングが始まった。 コースは風上マーク→風下マーク→風上マーク→風下マーク流し込みフィニッシュだ。専門用語でいうところの「ソーセージ2周」である。 我々には2号艇が割り当てられた。ちぇ。 我々は第3レースなのでレース開始までは時間がじゅうぶんある。 マリーナの駐車場で、Yachtting先々月号の「マッチレース虎の穴」を 読んで勉強する。ヘルムをとる水越さんはエントリーから スタートまでの定石を充分予習してあるそうなので安心だ。 我々のポジションは、ヘルムス:水越さん、ミドルデッキ:小川さん、永松、 フォアデッキ:馬岡さんである。ミドルデッキの小川さんはおもにピットと フォアのサポート、永松はメインセールと小川さんのサポートを担当する。 タック、ジャイブのフォーメーションをイメージしながらミーティングする。 イメージのなかでのフォーメションはバッチリだ。 着替えてハーバーで待つ。だた待つ。第1レーススタート予定は10時だ。 じっと待つ。話をしながら待つ。寝転んで待つ。立って待つ。歩きながら待つ。 レース海面は見えない。 12時くらいに第1レースの対戦者を乗せてマークボートが帰ってきた。 このボートに乗って我々はレース海面へと向かうのだ。 我々は対戦相手の「バイバイウラヤス」のメンバーと共にボートに乗り込む。 緊張感が高まる。 ボートが走りだし、レース海面へと向かう。自分のテンションが上がってくるのが わかる。不安がよぎる。その不安を自信が打ち消す。その自信を不安が崩す。 そして段々冷静になっていく。 第2レースの最後の上りからフィニッシュまでを見ることができた。 2艇の上り角度が全然違う。上らせた方がVMGを稼げるようだ。 第2レースの参加者と交替でレース艇に乗り込む。 スタート時間まで30分くらいしかない。10分前にはスタートライン付近まで 戻っていなくてはならないので、正味約20分間が練習時間だ。 セールを上げ、各自が持ち場について早速風上に向かって帆走させてみる。 あれ、なんだこのメインセールは。全然リーチコントロールできないぞ。ひで〜。 でもまあいいか。タックしてみる。それから風下に落としていって、スピンを上げる。 ジャイブする。あ〜あ。スピンつぶしちゃった。 イメージ練習と実際は違うなあやっぱり。 ヘルムからバウまでのコンビネーションとタイミングがうまくいかない。 クルーがコントロールすべきシートの前でお見合いをしてしまったり衝突したりする。 その都度フォーメーションを打ち合わせて修正する。 レース10分前ちかくなってスタートライン付近に戻る。 風が弱い。 我々はスターボードでのエントリーだ。 風が弱いので、スタート前のマニューバリングもたいしたことはできない。 スタートラインからあまり離れないようにする。 スタートした。ジャストスタートだ。 本部艇にX旗は上がっていない。ようし。このままいくぞ。 風が弱いとはいえ、ブームを開くほど弱くはないと思う。 しかしY-23なんて初めて乗るのでこのくらいの風だと開いたほうがいいのか 閉じた方がいいのか本当のところはわからない。 あいかわらずメインセールのリーチがいうことを聞いてくれない。 リーチが全然開かない。メインシートをダルダルにしてトラベラーを 相当上に引いても閉じたままだ。なんなんだこのセールは。 Y-23ってこういうのが普通なのか? スタートはイーブンか、ややこちらのほうがいいスタートを切ったのだが、 上り負けしてしまって、第一上マークまでに相手艇に先行された。 しかし、先行されてはいるが逆転可能な差だ。向こうが1回チョンボすれば 充分抜ける。 上を回ってスピンアップだ。 ありゃりゃりゃ。スピン横向きだよ。恥ずかしい。 スピンダウンして正しく上げ直す。 こっちがモタモタしてるうちに差がついたか、と思ったらそれほどでもなかった。 向こうもモタモタしていたのと、われわれのリカバーが迅速だったからだ。 我々にもまだまだチャンスがある。 風下マークへ近づくにつれて風がぱったり止んで、風が前のほうに振れてきた。 スピンダウンだなこりゃ。と思ったら本部船から音響信号が聞こえてきて N旗が上がった。レース中止だ。負けていたのでこの中止はうれしい。 N旗の下にX旗が上がっているので、運営側としてはすぐに再レースするつもりだ。 風待ちだ。 マークボートには第4レースに出場するチームがすでに乗っていた。 彼らも風待ちだ。 Y-23上で我々も風を待つ。 どのくらい待ったろうか。いままでと反対方向からの風が安定して吹きだした。 審判艇がやってきてレースのスタート開始時刻を知らせていった。 我々はタック、ジャイブの練習をする。 B14乗りの水越さんのタックの舵切りはなかなか特徴的だ。 ジャイブがだいぶ決まるようになってきた。ジャイブを1回するごとに上手くなる。 再スタートのときのスターティングマニューバは、なかなかよかった。 我々はスターボードストレッチの固め技をくらって、ケツに付かれた。やられた。 これではそのままリミットマークの外はるかまで持って行かれることになる。 が、リミットマーク近くで、向こうが我々とオーバーラップしてしまった。 そうなりゃこっちはラフィングだ。マークと我々の間に入った相手艇は 我々を避けきれなくなってしまい。艇が接触した。すかさずこっちはY旗だ。 審判艇の判断は勿論相手艇にペナルティだ。 やったあ。これでこのレースは勝ったも同然だ。 スタート後に相手が270度回ってる間に、こっちは楽勝で先行、 あとは相手をきっちりカバーしていけばそれで勝ち。 ヨットレースの基本だよね。 なんて浮かれていたら、今度はこっちが同じような状況に追い込まれた。 うまくかわしてペナルティは免れた。 スタートして相手をカバーしながら走る。 ポートに伸ばしているときにヘッダーが入った。 相手は下だが我々より大きく右にいる。 すぐタックしなきゃ。 と思ったけどしなかった。 後悔しても後のまつり。 上に近くで完全に抜かれた。そして差が広がる。う〜ん。VMGが全然違う。 あいつらいったいどうやってメインセールをコントロールしてるんだ? そんなことはないと思うが、 あいつらとこっちじゃセールのシェイプが違うんじゃないか? という考えがよぎる。そのことを証明してコミティに救済の抗議を出そうかとも思う。 でも、帆走指示書には全く同一の艇を使うとは書いてなかったからなあ。 最後の風上マークを回って 最後の風下のレグでも差をひっくりかえすことはできなかった。 相手艇が先にフィニッシュした。本部艇のホーンが鳴る。 我々にはもう戦うべき相手はいない。孤独にフィニッシュラインまで帆走する。 そうして我々の鳥羽カップマッチレースは終わった。 |