岩地で錨泊(1)
0840安良里着。 着いたらテンダーがなかった。どうしようかと思っていたら、JOJOさんとこのテンダーがちょうど岸壁に近付いてきたので、声をかけて、乗せてってもらうことに。どうもです。 給水岸壁にフネを廻す。ひさしぶりの着岸。ロープを準備したり、フェンダーを準備したりして着岸の準備をしているうちに、給水岸壁を別なフネにとられてしまったので、その隣に着ける。 係留して待つ。 空いたので、係留索を持ってフネを引っ張って給水岸壁へ移動させる。 清水タンクの水を一度カラにするために、蛇口をあけてシンク経由で水を全部だそうとしたら、排水の流れが悪い。ゴムのスッポンでスコスコするけど、だめだ。これは上架したときのチェック項目に入れておこう。 清水タンクを2度空にして濯ぎ(ゆすぎ)たかったけど、排水口が調子悪いようなので、古い水を出した後で満タンにするだけにする。 ポリタンにも水を満タンにしておく。 給水岸壁を明けるために、係留索を引っ張って唐草を再び移動させる。 適当な場所で係留策を固定し、車から荷物を持ってきて積む。 経由のポリタンを持って軽油を買いにクルマでいく。 宇久須のJOMOで軽油を15L買う。 戻って8Lほど給油。 離岸。 港内でメインをアップ。 1100出港。 出港まで慌ただしかったが、港をでてやっと落ち着いた。おにぎりで腹ごしらえ。 今日は岩地でアンカリングでオーバーナイトの予定だ。そして翌朝中木に行くつもりだ。中木で橋さんと待ち合わせしているのである。 天気予報では今晩は北東の風がずっと吹くようなので、西伊豆のアンカリング日よりだ。
岩地の入り江に着いて、アンカリングの場所を探す。北東からの風を考えて、湾の北寄りのあたりの水深をチェックする。だいたいポイントが決まったので、その周辺の水深を細かくチェックする。風が360度振れてもいいように、半径約50m、特に岸よりの水深をチェックする。現在干潮に近いので、これより浅くなることはまずあるまい。
アンカーをセットする。2年前に買って、一度も使っていないCQR 25lb(11.3Kg)を今日使う。26ftのフネにはオーバースペックともいえる安心のアンカーだ。オーバーナイトでアンカリングなので、このくらいの安心感は欲しい。 6mmのチェーンを3m, 10mmのを約4mつなぐ。合計7m。 準備完了したころに、安良里の海鳥(ベネトウ)がやってきた。同じようなポイントをめざしているようだ。そのためこちらは当初考えていたよりも岸よりに打つことになってしまった。 海底が見えるので、砂地のところに打つ。アンカーの頭(カシラ。クラウン)から双綱はとっていない。砂地だし、見えてるし、大丈夫だろう。 水深約6mのところに打ったので、とりあえずその5倍のロープを出す。これから満ちてくると、5倍未満になるので、それを見越して少し多めに出す。 1330アンカリング完了。 海鳥は、電動ウインドラスのオールチェーンだからアンカー打つのはあっという間だ。 アンカリングが完了して、やれやれ一安心。 女房はキャビンでランチの準備。私はオーニングをセットしてテーブルをセット。
ワインとチーズでランチ。 日ざし。そしてオーニングの日陰。初夏のそよ風。新緑から緑へ。うぐいす。透き通る海。幸せはここにある。
1700頃海鳥は帰っていった。 日が落ちて、オーニングを片付ける。コクピットを片付ける。片付けが終わって、さてと、というときに風があがってきた。南南西からあがってきた。あれれ。なんで南南西なの。これだと岸に近付いちゃうよ。大丈夫なくらい余裕はとってあるけど、あんまり気分よくないなあ。でもまあ風はいずれ北に回るだろう。 暗くなるまえに各部のチェック。 アンカーライトに使おうと思っていた、乾電池式のランタンが電池の液漏れで使えなくなってしまった。自己点灯灯を使うことにする。これの電池を換えたいと思っていたところなのでちょうどいい。ブームから吊るして、メインシートに固定。 暗くなってきたので、寝ることにするが、風がおさまらない。ビュービュー吹いている。しかも南南西だ。困った。暗がりで見ると、磯まで思ったよりも近く感じる。心配だ。 パジャマに着替えて横になったが心配だ。気になる。 アンカーロープをさらに長くのばして45mは出した。チェーンが7mくらいあるから合計52m。水深は現在約8m。スコープは7倍まではいかないが、6倍以上は出ている。チェーンの割合は13%。かつての計算によれば、このくらいなら30ノットくらいまでは耐えられるはずだ。30ノットでずっと吹いても耐えられるんだから、瞬間ならもっと吹いても平気だ。 現在の風速は、ハンディ風速計で確認したところでは、16ノット。このまま吹き上がってきてアンカーが抜けたとしても、CQRはずぶとくすぐに潜り込んでくれるだろう。振れても、あのヘンな向きに可動するシャンクが粘ってたえて、そして抜けてもすぐに潜りこんでくれるだろう。 問題は後ろの岩場だ。抜けてもいいが、岩場に流される前に再び海底を捕らえてくれるかどうかだ。
それにしても心配だ。
安良里に帰るか。帰ろう。あの安心のバースに帰ろう。よし決めた。帰る。 そう思って出港と航海のシミュレーションをした。 だめだ。 外に出るほうが危険だ。ここでこれだけ吹いていれば、外はもっと吹いているだろう。しかも夜の海だ。万が一落ちたらアウトだ。ハーネスをつけて、ライジャケつけて、ストロボライトを装備していても、自己点灯灯やMOBポールがあっても、万が一はある。夜の海だ。 ここにいれば、走錨して岩場にぶつかっても船体放棄する覚悟があれば、死ぬことはない。 リスクとメリットを考えれば、ここにいたほうがリスクは小さい。 錨泊を続行することに決める。 万が一のため、パジャマからセーリングできる格好に着替えて、カッパを着てライジャケを着て寝ることにする。貴重品は、バッグにひとまとめにして、非常持ち出し袋とする。 どうせ一晩中ひとりでアンカーワッチなどできない。絶対に途中で眠ってしまうだろう。眠らないとしても、活動レベルは落ちる。起きてるほうがかえって危ない。 覚悟も決まったので、目覚ましを3時間ごとに合わせる。 風がそれほどでもないときは横揺れがあるが、吹き上がると横ゆれが止まる。アンカーロープがビンビンに伸びているんだろう。アンカーで風に吊られているという感じなのかもしれない。ブローがおさまるとまた横揺れを感じる。 ブローが来て、横ゆれが止まったとき、一瞬スタン方向にフネが動いた。加速度を感じた。フッ、と抜けた感じがした。アっ、と思ったが、すぐに止まった。たぶん振れてアンカーが抜けた瞬間だったんだと思う。ほんの一瞬だった。それとも単なる気のせいかもしれない。CQRがそう簡単には抜けまい。ここの海底は理想的な砂地だし。 眠れない。 横になって風の音の強弱に耳をかたむける。時々、自分のポイントを確認するためにコンパニオンウェイから顔を出す。単一乾電池5個直列のマグライトがバッチリ岸を照らし、位置確認ができる。オッケーだ。 それでも眠ってしまうものだ。 目覚ましで起きる。 デッキに出てアンカーロープをチェックする。やはり少し擦れている。擦れてる場所をずらす。(あとで気付いたが、擦れてる場所をタオルででも補強しておけばよかった。起きるたびに擦れてる場所をずらしていた) やがて明るくなるころには、風が180度変わって北北東くらいになった。これなら、もう走錨したって安心だ。この方向なら後ろにはいくらでもマージンがある。 それにしてもCQRはたいしたアンカーだ。抜群の信頼度だ。ほぼ360度振れ回ったが、とうとう走錨はしなかった。
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