エア噛み
朝は寒い、というのを前回学習した。今日はゆっくり出る。 0800小田原発。1000安良里着。
唐草に着き、早速ビールを飲む。朝からビール。今日は暖かくて気持ちがいい。ゆったりした気分だ。港内にはほとんど風がない。ときどきフワっとしたブローが入る。 近場に出かけるか、安良里沖を一回りして、バッテリー、エンジン、船底、ペラの状況をよくしておこうと思った。どうせ機走しかしないだろうけど、万一にそなえて、艤装だけはしておこう。 ついでだから、エンジンルームを覗いてみる。Vベルトがちょっと緩んでいるようなので、調整する。ついでに燃料フィルターの水抜きもする。あれ、コポコポと空気が入るぞ。いいのかなあ。ディーゼルにエアは禁物なはずなのになあ。でも飛行機(セスナ152)乗るときのプリフライトチェックでも必ず燃料の水はチェックして抜くもんなあ。専用のツールを使ってチェックするもんなあ。あ、ちなみに私、パイロットでもあるんです。スチューデントパイロット、すなわち訓練生ですけど。 少し不安になったので、しばらくエンジンを回しておくことにする。15分くらいは回しただろうか。大丈夫みたいだ。水抜きの方法はあれでいいみたい。 出港11:10。 係留区域の水路を出て、港外に出ようとしたそのとき、エンジンがふけなくなった。パスパスパス。ふにゃふにゃ、という感じでエンジンが止まった。 まさに港の出入口のところだ。幸い風がないので、流されることはない。といってセールアップしても動かないだろう。 こんなとこに浮かんでいたら邪魔だ。すぐにどかないと。といっても動けないので、漁協に電話して助けに来てもらう。協同丸で来てくれた。バウのクリートにもやいをかけて、協同丸もバウのクリートにかけてアスタンで曳航してくれた。 漁協前の岸壁につける。 曳航してくれた人が仁科のヤンマーに連絡してみるように、ということなので、漁協に行って、電話番号を教えてもらおうとしたら、ちょうどいつもの事務員の人と階段ですれ違った。よかった。ここで会えなかったら、事務所にはだれもいなくなるところだった。 事務員の人に、電話番号だけ教えてもらおうとしたのだが、直接電話してくれた。どうもありがとうございます。仁科のヤンマーは、エンジニアが仕事で出かけていて、だめだった。 次に安良里の山本発動機に電話してくれた。 電話を変わって事情を説明した。 遅くとも12:30にはきてくれるそうだ。 事務員さんにお礼を言って、フネに戻る。 やっぱりエアを噛んだのかもしれない。エンジンをあけてエンジンのドキュメントをみながらエア抜きしてみようと思うが、よくわからない。どれがどのパーツなのだ。恥ずかしい話だ。 そうこうしているうちに漁師のおじさん達がかわるがわるやってきた。彼らはすぐエアを噛んだな、というところがわかった。しかしながら唐草のエンジンは、漁船のエンジンにくらべて小さすぎる。2人目の「機関長」と呼ばれていた丸顔のおじさんは燃料のエア抜き用のポンプまでたどりついたが、どこを緩めて抜くのかがわからない。うまく抜けない。でもさすがだ。初めてみたエンジンでもわかっちゃうんだもんな。マニュアルなんか見ないで。 漁船のエンジンと唐草のエンジンの大きさを例えていうなら、トラックのエンジンと原付きくらい差がある。 ひさしぶりに伊豆弁を堪能した。 時間どうりに山本発動機の山本さんがヤンマーのつなぎを着てあらわれた。手にはメガネレンチとスパナモンキー、そしてドライバ。 エンジンを見ると、すぐにふたつくらいのナットを緩めて、二箇所のネジを外して、ポンプを作動させてたら、燃料と一緒に泡が吹き出した。さすが。この間約2分。 それから泡がなくなるまで、手でポンプを動かす。その後デコンプした状態でセルを回し、さらに燃料から泡が出ないのを確認する。 ネジをもとに戻して、エンジンをかけた。やった。かかった。 その後、エアが入ったときの抜き方を教わった。今回外したナットは揺れる洋上では外さないほうがいい、ということまで教えてくれた。かわりに別なところを揺るめても同じことができるのを教えてくれた。今回外したところは、確実に素早くリカバーできるネジのようだった。 災い転じて、知識を増やすことができた。山本さんどうもありがとうございました。 山本さんと一緒にキャビンの中に入り込んできた人がいた。どうもヨット乗りのような雰囲気だけど、漁師風でもある。地元の陸の漁業関係者かな? エンジンがかかったので、その人に一緒に乗りませんか、と誘ってみた。乗るということなので、機走で港外に出た。その人は大塚さんといって、安良里にヨットを置いていたことのある土肥の人だった。 港外に出てしばらく走ったら、少しエンジンのパワーが抜けたような気がした。急いで港に戻る。 なんかエンジンの音が滑らかじゃない感じ。 倉庫岸壁にとめて、しばらくアイドリングよりやや回した状態でエンジンをかけておく。 その間に大塚さんと話しをする。 温泉の話になった。土肥のいい所を案内してくれるというので、お願いすることに。 その前にフネを片づけなければ。 その前に港を一回りして、エンジンの調子をみる。スローと全開。 大丈夫みたい。 解装してテンダーで戻る。 大塚さんのBMWの後について、大塚さんの家へ。すごくいい家だ。ロケーションもいい。山の上で見晴らしがよくて、太陽サンサン。すべての作りがゆったりしていて、広い。玄関。廊下。サンルーム。すばらしい。 応接間でお茶をいただきながら、ヨットの話。楽しいなあヨットの話は。 1600くらいに大塚さんの家を出て、土肥の温泉へ。 大塚さんは地元の人なので、地元価格。地元じゃない人は400円。 いい温泉だ。露天もある。露天はぬるめ。長く入っていられる。石鹸、シャンプーは置いてないので、自前のが必要。施設としては、湯舟と更衣室、トイレのみ。休憩は、外の縁台を使う。 この温泉は濃い。源泉からジカに引いているらしい。この温泉は、大塚さんの奥様もお気に入りらしい。いまままに入った伊豆の温泉のなかでは一番の濃さだ。からだポカポカ。お肌しっとり。私のようなオッサンでもお肌がしっとりすると嬉しい。スベスベ。ポカポカ。
湯上がりに外に出て、顔を撫でる風がなんとも気持ちがいい。値千金である。 近くにとめた車のところで大塚さんと分かれる。 今日は禍転じて福となった日だった。エア抜きの方法を覚えたし、新しい知り合いができたし。
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