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チャーター三日目。ルイビトンカップレース観戦とランギトト島クルーズ。

日付 1999年11月17日(水)

天気 晴のち曇 風向 北より 風力 2〜7  波高 1.0〜1.5
行き先 Rangitoto島
出港時刻 1100 帰港時刻 1900
乗員 4名


起きたら別な入り江。

未明にアンカーを上げる音で眼がさめた。フルチェーンのアンカーを上げると相当大きな音がする。これで起きない人はいまい。

寝る前に、ロイから「今晩は風向きが変わると思う。もし風が変わって、うねりが入るようだったら、夜中にフネを移動させる。寝てていいからね」というのを聞いていたので、そのまま寝ていた。自分が寝ているのに、フネの位置が変わるっていうのはすごい。寝ていて揺れると、移動したいけど、動かすのも面倒だなあ、という葛藤があるのだが、それがないというのがすごい。

かねて予定の行動なので、音がしずまったら再び寝させてもらう。自分が寝ているのに、フネが動く。うねりが入ってきてちょっと寝心地わるいな、と思ったらフネが動くのだ。まるでお大尽のようだ。

移動先は、同じカワウ島の西側の入り江のBon Accord Hbrというところだ。ここは湾の口が西に開いて、陸深く入り込んでいる。とても静かだった。起きてキャビンから出てもだれもいなかった。ロイもケイトもいなかった。テンダーもないので、どっかに行ったんだろう。この入り江には、お店も1軒ある。

コクピットに上がってくつろいでいたら、ロイが帰ってきた。

ケイトは自分のキャビンにいたみたいだった。寝てたのかな。

朝食を済ませてアメリカズカップのレースエリアに向かう。このアメリカズカップ(ルイビトンカップだけど)のレースが見たくて、レース艇の走りを現場で見たくて、わざわざここまで来たのである。今回の旅行の第一目的なのだ。

下マーク付近で観戦したいので、その方向へ向かって走る。下マークで観戦したいというのは、西村一宏氏の記事を読んで感動したからである。その記事は某ヨット/ボート専門雑誌に書かれていた。(こところで、話は脱線するが、この雑誌の編集長の記事はちょっとつまらない。説教臭かったり、明らかな間違いがあったりする。署名記事なので嫌なら読まなければいいだけなのだが)

西村氏はニッチャレのセーリングクルーでもある。西村氏の記事には毎回感動させてもらっている。実に素晴らしい。氏の文章には人に対する優しさがある。氏が描写したアメリカズカップ艇での下マーク回航のシーンには感動で泣けてきた。

風が上がってきた。波も出てきた。風速計によれば、真風速で20ノットを越えた。

レースエリアは、ちょうど風下だ。ほとんどデットラン。ジェノアをメインセールの反対側に広げて、観音開きで行く。こっちでは観音開きのことをグースウイングというそうだ。

この風と波でデットラン。なんといってもワイルドジャイブが恐い。集中して走らせる。

1400頃レースエリアに到着。舵をロイに変わってもらう。ジェノアを巻いて、エンジンをかける。

この日の対戦は、以下の通り。

Team Dennis Conner vs.AmericaOne
FAST 2000 vs.America True
Young Australia vs.Young America
Nippon Challenge vs.Spanish Challenge
Le Defi BTT vs.Abracadabra 2000

私は、アメリカズカップ艇がレースをしている海面と同じ海面で帆走してきたのである。そう考えるととても嬉しくなる。アメリカズカップ艇が戦っているのと同じ海況を帆走したのである。嬉しい。


最初にシャッターを押したのは阿修羅だった。時刻は1250。


なんとグッドなタイミングだろう。ニッチャレだ。阿修羅だ。阿修羅が下マークを回ってスターボードで、我々のほうに向かってくる。夢中でシャッターを押す。このために買った一眼レフだ。いいぞいいぞ。かっこいい。このくらい吹いた方が見てて楽しい。だいぶ揺れるけど。

阿修羅の下側から撮影。マークを回ったらどういうコースをとるかはわかっている。そのラインぎりぎりから観戦。


何枚も撮った阿修羅の写真の中で一番のお気に入り


次に来たのがフランス艇。これもかっちょいい。速い。あっというまに過ぎていく。

バシャバシャバシャとシャッターを押す。


これはズームで撮っているけど、レース艇との体感距離はこのくらい


あんまりラインぎりぎりだったせいか、ポリスが我々の上側に寄ってきて、これよりそばにくんなよなというアピール。


我々の上側に寄ってきたポリス


揺れがはげしくて、浮かべたフネで見てるのはしんどい。帆走してれば大丈夫なんだけど、これじゃ酔ってしまう。

それにランチだし。

観戦を切り上げて、ランチのために、入り江にいく。

ランチの後、この入り江で上陸する予定だったけど、風が強いので中止することにした。

ランチの入り江は、風をあまり遮らないので、今晩のアンカリングスポットには適さないということで、同じ島の別な入り江に行ってみる。しかしここもこの風ではあまりいいポイントとはいえない。

ちょっと遠いが、ランギトト島とその隣の島の間の入り江まで行くことにする。ここまで行くと、明日ハーバーに帰るのが遠くなるので、早起きしなきゃいけない。でも、まあ仕方がない。チャートを見ても、この入り江よりは、ランギトト島の入り江のほうが快適そうだ。さあ、セールを上げて出発だ。

真風速で32.5ノットのランニングでかっとぶ。時にサーフィングする。サーフィングは気持ちいい。

ロイのナビゲーションで私が舵。

1時間くらいで到着。ここはいい。しっかり風が遮られている。風は相変わらず強いが波はない。


最後の夜のための泊地


ディナーまでの間、ワインとチーズを楽しむ。そしておしゃべり。

昨日、取ってきたホタテをロイが料理してくれた。ロイのオリジナル料理で、「 ホタテのチーズソース、アラ・ロイ」だそうだ。アラ・ロイは「ロイ風」といったところか。

溶けるチーズと白ワインのソースでホタテをボイル。それにハーブ。とてもうまい。チーズフォンディユみたいな感じだけど、ソースがちょっと違う。さすがチーズ会社の社長だ。チーズに対する造詣の深さを感じる。

ケイトの今日の料理は、チキンのエスニックカレー風味。こちらは、アラ・ケイト。ごはんと一緒にたべる。これも実に絶品。あっさり味だけど、ちゃんとパンチがある。エキゾチック。思い出しても嬉しくなる味だった。ケイトは料理の天才だと思う。今回のチャーターで食べた料理は全て満足した。


最後のディナー


明日は早いので、早くねる。


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