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貞山堀(新堀)往路:名取川(閖上)〜 七北田川(蒲生)


名取川へ通じる水門

名取川に出ると、おそらく貝取りと思われる漁師がフネを出していた。遠くの干潟では潮干狩りもやっているようだ。

名取川の川漁師

漁師は水上に舟を留めておくのに、アンカーではなくて竿を川底に2本突き刺して、その竿に舟をくくりつけていた。なるほど、こういう係船方法もあるのか。浅いところに軽いフネならこの方法で固定できる。アンカーのように船が動くことがないし。

名取川から七北田川までの貞山堀は「新堀」とも呼ばれている。ここは明治時代になってから掘られ、1872年(明治5年)に完成した。

名取川を横断し、新堀に入ろうとしたら、堀の左側を通ってこちらに向かってくるフネがある。フネの世界では右側通行が大原則である。おかしい。

名取川から新堀に入るところ。川にささっている竿に注目

相手艇は速力を落とす気配がないし、相手は出船なので優先権がある。こちらが新堀に入る充分手前で大きく旋回してそのフネをやり過ごしてから堀の右側を通って新堀に入る。ただ、気になったのは川幅の三分の二くらいのところに竹竿が刺してあって、出船はその竿の岸側を通ってきたことだ。竿の反対側は浅瀬なのかもしれない。新堀と名取川のローカルルールがあるのかもしれない。

本来なら、障害物があるところには万国共通な浮標等の標識がある。しかしここは航路でもないしローカルなルールとローカルな標識で足りているのかもしれない。クルマも走る一般道と登山道の違いか。ちょっと例えが悪いか。

新堀に入ると、堀の西岸にプレジャーボートがいくつも係留されていた。そしてその先には堀の幅を広げた舟溜まりがあった。

それらの係留艇を自艇の引き波で揺らさないようにデッドスローでその区域を越える。

船溜まりを過ぎ、再び速力を4ノット程度に上げる。

進むにつれて、景色の中から人工物が減ってきた。

井土浦の手前あたり

ほどなく右側に井土浦の景色が開けてきた。ここはとても広い水面だ。しかしここは潮が引くと大きな干潟が現れるはずだ。背の高い草と松林、干潟と水路。カニ等の生物。そして水鳥。こういうところに小舟を浮かべて楽しみたいと思う。でもそのためには水路の調査をしてからだな。貞山堀大冒険の次は、井土浦大調査をしてみたい。そそられる風景だ。水路にアンカリングして、日除けの下で日がな一日干満の景色を楽しみたい。夜には月に照らされた干潟の景色を楽しみたい。

写真左が井土浦

さらに新堀を進むと、今回の周航で一番通ってみたかった箇所にさしかかってきた。ここは Google Earth で上空から見ると堀の両側が林の帯となって長く続いているのだ。堀からは木々しか見えないはずだ。

林の中を進む

実際に航行してみると、護岸はされているが、期待どおりの林の中の堀だった。つがいの水鳥がたくさんいる。堀を進む我々を避けようと水面から飛び立つ。そして我々の進行方向の先の方に着水する。我々が近づくとまた飛び立つ。何度かそんなことを繰り返される。

岸に上がってこちらを見ているつがいの鳥もいる。

堀の東岸は松林。西岸も松林。西岸には松の林の中に広葉樹も混じっているのでそこだけ明るい緑になっている。新緑の緑。そして所々に山桜。名残の花びらが風に散り、川面に浮かぶ。

温帯のジャングル。時節柄、密林という感じではないが、これもまた風情である。

堀の西岸には遊歩道かサイクリングロードが整備されているようだが、まだ早朝のせいか人影はない。

川面からの景色は下から見上げる形になるので、土手から川面を見下ろしたときの景色とは違う風景となる。この景色が川遊びの楽しみのひとつである。

しばらくするとまた集落に出た。仙台市の荒浜という地域だ。人家が堀端まで建っている。この付近の太平洋側には海水浴場がある。

荒浜地区の町なかの貞山堀

荒浜地区の貞山堀は、川岸がコンクリートで護岸してあり、堤防もコンクリートで築かれている。岸壁には土地のフネが点々と係留されている。

そこを過ぎるとまた堀の両岸が林になる。水面に張り出した木々もある。木々の枝が堀に届いているが、新堀は川幅が広いので、空が見えないほどのトンネルにはならない。

見渡す限り人工物もなく(堀そのものが人工物ではあるが)、我々以外に誰もいない。その中を小型艇で自然を味わいながら愛でながら低速で巡航する。水の上という非日常がまた冒険心をくすぐる。

再び自然の中へ

しかし自然が豊かな場所というのは不便な場所でもある。もしここで船外機が壊れたり、プロペラにダメージを受けたら竿とパドルで帰らなくてはならない。少なくとも集落までは行かなくてはならない。ほんとうの大冒険になってしまう。注意して進む。気分は探検隊である。


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