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下田に向けて(その1)


秋分の日の連休と遅い夏休みを使って、安良里から下田までクルージングに行くことにした。そのための計画書はクラリスワークスのA4で6ページになった。計画書作成と平行して航路を吟味し、GPSへの入力も行なった。これらの準備は昨夜までに済ませた。


日付 1998年09月23日(水)

天気 雨のち雷雨 風向 南〜北 風力 - 波高 0.5-1.0
行き先 港内 出港時刻 ---- 帰港時刻 ----
乗員 2名

計画書に最後の修正を入れ、買い物とパッキングを済ませた。

1400頃自宅を出発。1630頃安良里着。

早めの夕食は田子のカレーの店にしようと思ったが、ガイドブックで見当をつけていた店は15時から17時まで休憩だった。

しかたなくうぐすの湯の向かいのラーメン屋に行こうとするが、ここも休憩中。となりのこあじ寿司の店に入る。この店の代表メニューの「こあじ寿司」と「かさごの味噌汁」のセット2000円を注文する。かさごの味噌汁は800円。800円といえば、うぐすの湯の食堂で干物定食が食べられる値段だ。以前に食べた、宇具須の三共食堂のかさごの味噌汁も800円だったと思うが、これは美味かった。さかなの旨味がたっぷり出ていた。魚の嫌いな人はこれが嫌いなんだろうけど、魚が好きな人は、この旨味がこたえられないののである。 しかしこっちの店のかさごの味噌汁は味がしない。魚のダシがほとんど出てない。うすっぺらな感じ。魚がまるまる1匹入っているのにコクがない。一度どっかで使ったあとのよう(そんなわけないけど)。これならさかな嫌いな人でも問題なく食べられると思う。魚の味がしないんだから。こあじの寿司のほうは、こあじに対して薬味の味が強すぎる。さかなの味が薬味の後ろに隠れてしまっている。薬味が臭みを消したり、素材を引き立てたりしていない。素材の味そのものを消している。薬味寿司なのかな。これも魚嫌いな人でも食べられるような工夫なのだろうか。

店を出たら雨。

安良里港に着き、ケーンボートデザインの石井さんに電話してみる。石井さんにはジャックラインの取り付け工事をお願いしている。

石井さんは、係留中の唐草で作業中とのことだった。ボートで迎えにきてくれることになった。カッパを着て岸壁で待つ。雨が強い。

唐草に行き、船を岸壁に回すことにした。石井さんはボートで倉庫岸壁へ行き、そこから車を回してくる。私は一人で、漁協の売店の前の岸壁へ唐草を回す。いままで唐草を一人で動かしたことはないが、雨は降ってるけど風がないので、一人でできるだろう。

エンジンをかけ、係留策をはずし、船を出す。

カッパのフードで視界が遮られる。首を大きく回してあたりを確認する。

と、しばらくしたら、大きな音でブザーが鳴り出した。「ピー」だ。あややややや。やってしまった。幸い水路の真ん中だったので、舵を中立にして、急いでエンジンを切り、キャビンに降りて冷却水のバルブを開ける。大急ぎでコクピットに戻る。しばし行き足で船が進む。

エンジンを切ったので、急に静かになる。雨音が聞こえる。雨は港全体をつつんでいる。

再びエンジンをかける。「ピー」が鳴り響いたが、3秒くらいで鳴り止んだ。船尾からの冷却水を確認。

「バッテリーをオンにしたら冷却水」。バッテリースイッチの所に書いて張っておこうと思う。バッテリースイッチを入れるときに、必ず目に入るように。

港の広いところに出たので、クラッチをニュートラルにして、係留索を準備する。

係留索のセットが完了したので、再びクラッチをつなぎ、岸壁に向かう。

フネを岸壁に寄せ、岸壁と平行になって行き足をとめたところで、岸壁にとび移る。スプリングを確保。よしよし。今日は風がないのでラクラク作業できる。

ほどなくして石井さんが来た。ハイルーフのワンボックスだ。作業場所兼ツールカーなんだと思う。いいなあツールカー。

唐草のキャビンに入るために、唐草のカギを石井さんに郵送していたのだが、送ったカギが合わなかったらしい。しかたがないので、南京錠を切断して入ってもらっていた。問題のカギを見てみたら、違うカギがついていた。これは漁協に船底塗装を頼んだときに、カギをなくしたというのは聞いていたので、漁協が別なカギをつけてくれたんだと思う。で、連絡が間に合わなかった、と。

今後こういうことがないように、ナンバー式のカギに変更することにした。

石井さんが続きの作業をしている間に、ロードスターを岸壁に回し、荷物を積み込む。

軽油を買いにいく。

一番近いJOMOが閉店していたので、その先はるかの出光までいく。18Lで1503円なのを1500円丁度にしてくれた。とてもうれしい。

帰りに宇具須のダウンタウンの薬屋で蚊取り線香一箱と蚊取り線香をセットしておく器具を買う。

唐草に戻ったら石井さんの作業が終わっていた。

左右のジャックラインとハーネスフック。しっかりした部品を使い、ていねいな仕事をしている。見積もりを見たときは値段が高い感じがしたが、出来栄えをみて納得である。ジャックラインは計算上3トンまで耐えられるそうである。

せっかくつけたジャックラインだが、実際にジャックラインのおかげで命拾いするようなことがないことを祈る。

買ったときに付けてもらったトラベラーから水漏れがした件を聞いてみたら、取り付け工法が簡易なせいらしい。このトラベラーはあまりはじっこでは使えないみたいだ。

石井さんには、またいろいろお願いしたいと思う。

北寄りの風が吹いてきた。雨の勢いが落ちてきた。

石井さんと別れ、軽油のポリタンを積み、ロードスターを駐車場に戻す。

女房ともども唐草に乗り込み、岸壁を離れ係留場所に戻る。やはり一人よりも、2人でフネを動かすほうが安心だ。

係留場所に戻ったのは1815時。夜の直前という暗さだ。

ポリタンを黒いゴミ袋でつつんで、夜中の雨に備える。

夜はワインとチーズを楽しむ予定だったが、なんだか疲れが出てきた。今日はけっこう走り回ったからなあ。

午後の紅茶を飲んで、横になる。

NHKラジオをつける。

先日買った電池式のランタンは熱を持たないので、夏場は重宝だ。冬は暖房をかねてガスのランタンを使う。

雨が強くなってきた。コンパニオンウェイを閉める。蚊取り線香も消す。

雨がますます強くなってきた。まるで、シャワーのようだ。デッキをたたく雨粒がうるさい。

雷も鳴り始めた。どしゃ降りの雨の中、稲妻の光で港全体が照らされる瞬間はまるで映画のようだ。

でもうるさい。

なかなか寝られない。それでも眠ってしまったようだ。2200のニュースを聞いたところまでは覚えている。


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